▼カイラシュ・サティヤルティさん=児童労働の廃絶を訴えるノーベル平和賞受賞者
2016年6月10日 毎日新聞
カイラシュ・サティヤルティ(Kailash Satyarthi)さん(62)
「ドリーム。大きな夢を持つ。ディスカバー。自分の能力、秘めた力を発見する。そしてドゥ。さあ、行動を起こそう」
国際労働機関(ILO)が定めた児童労働反対世界デー(6月12日)を前に、日本の国際NGO「ACE」(エース)の企画で来日した。大学での講演で「三つのD」を強調。国会議員と懇談した際は「みなさんが着ている服は途上国の子どもたちが縫ったものかもしれない」と自覚を促した。問題の解決には価格競争にしのぎを削るビジネスのあり方や消費者の意識が深く関わる。ILOの推計によると、世界には十分な教育を受けられず、不当な労働を強いられる1億6800万人もの子どもがいる。
非暴力を掲げたマハトマ・ガンジーに憧れた。貧困層の女性や子どもが人身売買などの犠牲になる状況に怒りを覚え、電気技師から人権活動家に転身した。過酷な労働現場から子どもを救い出し、家庭に戻す活動を始めた。共鳴の輪が広がり、1998年には世界約110カ国のNGOや組合などが歩きながら児童労働の廃絶を訴えるグローバルマーチを展開。このキャンペーンに参加しようと当時、大学院生だった岩附由香さん(41)ら有志がACEを結成した。
パキスタン出身のマララ・ユスフザイさん(18)と共にノーベル平和賞を受賞したのが2年前。以後も精力的に世界各地をめぐり「子どもたちに自由を」と説く。「子どもたちの夢、未来を奪うことは、大きな暴力です」<文と写真・明珍美紀>
■人物略歴
インド中部マディヤプラデシュ州出身。1980年「子どもを救え運動」創設。同志である妻が活動をサポート。