2016年5月14日土曜日

【メディア掲載】(サミットの舞台裏)市民への提言、反映へ磨こう(5/14、朝日新聞)

5/14の朝日新聞名古屋版に、2016年G7サミット市民社会プラットフォーム共同代表の石井澄江(ジョイセフ代表理事)へのインタビュー記事が掲載されました。

記事は以下のリンクから一定期間ご覧いただけます。

(サミットの舞台裏)市民への提言、反映へ磨こう
2016年5月14日 朝日新聞 聞き手・滝沢隆史
http://digital.asahi.com/articles/ASJ5672LTJ56OIPE03Q.html

以下に全文を転載します。
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(サミットの舞台裏)市民への提言、反映へ磨こう
2016年5月14日 朝日新聞 聞き手・滝沢隆史

写真・図版
インタビューに答える石井澄江さん=東京都新宿区、西田裕樹撮影

■「市民社会プラットフォーム」 共同代表・石井澄江さん

特集:伊勢志摩サミット
フォトギャラ「伊勢志摩、世界が注目」
 国際社会で決められたルールがある日突然、自分たちの活動に影響することはいくらでもあります。全てが決まってから悔やんでも遅い。政府が決めた解決策が、いつも最良とは限りません。一人の市民として考え、どうするべきかを政府に主張することが大事です。それがアドボカシー(政策提言)です。

 サミットで集まる大国の指導者たちに、市民の目線をどのように持ってもらうのか。政策提言を通じて各国首脳にアプローチすること。NGOやNPOといった市民社会が伊勢志摩サミットで目指す役割です。

 日本で市民社会が大きな力をつけたのが、2008年の北海道洞爺湖サミット。環境や開発などの分野で、それまでは別々に活動していたNGOが結集し、市民社会の総意としての政策提言に結びつけました。

 NGOの強みは、現場を熟知していること。活動拠点の途上国に精通し、専門性も身につけています。現場から積み上げた提言なので説得力もある。1999年の独ケルン・サミットでは途上国の累積債務の免除を求めたNGOの主張が受け入れられ、救済策の合意につながりました。

 ただ、こうした例は多くありません。近年はサミット前に首脳の個人代表(シェルパ)とNGOの対話が恒例になるなど、政府にとって市民社会の存在は無視できなくなりつつあるだけに、提言をいかに反映させるかが今後の課題です。

     ◇

 じくじたる思いもあります。提言が市民社会を代弁しているつもりでも、一人一人に分かりやすい言葉で興味を持ってもらえるような働きかけが十分できているのかどうか。私たちが出すメッセージをもっと磨かなくてはなりません。

 前回の洞爺湖と今回の伊勢志摩では、求められる政策提言の質がまるっきり違います。洞爺湖サミット直後のリーマン・ショックが状況を一変させました。景気が良かった頃のように「援助を増やせ」「金をたくさん出せ」と言うだけの提言は通用しなくなりました。政府と同じ土俵に上がり、修正したり追加したりして代案を示す提言が必要です。

     ◇

 NGOの連携がさらに求められる一方で、要求される専門性は格段に上がりました。NGOのたこつぼ化が進み、互いに何をしているのか分からなくなっているのも事実。ジレンマです。

 伊勢志摩サミットに期待することは、日本が議長国にふさわしいリーダーシップを発揮し、明確な公約を打ち出すこと。公約には、しっかりとした予算の裏付けが必要になります。

 たった7カ国で世界のルールを決めるのはおかしいと、サミットの開催自体に反対する主張もあります。その通りだと思います。しかし、「たかがサミット、されどサミット」。現実にサミットの影響力が無視できない以上、ただ反対だけを叫んでも仕方ありません。市民が政策提言をして、しっかり声をあげることが大切です。(聞き手・滝沢隆史)

     ◇

 石井澄江(いしい・すみえ) 68歳。伊勢志摩サミットへ政策提言する「2016年G7サミット市民社会プラットフォーム」共同代表。大手商社勤務を経て、現在は途上国の女性の命や健康を守るNGO「ジョイセフ」の代表理事。