2016年5月27日金曜日

伊勢志摩サミット:「地に落ちた」G7へのNGOの期待 「持続可能な地球」へ、市民社会はここから立ち上がろう! =G7サミット「首脳宣言」への市民社会の評価=

伊勢志摩サミット:「地に落ちた」G7へのNGOの期待
「持続可能な地球」へ、市民社会はここから立ち上がろう!
=G7サミット「首脳宣言」への市民社会の評価=

「持続可能な開発目標」(SDGs)や新たな気候変動目標「パリ協定」が採択されてから初のG7サミットとなったG7伊勢志摩サミット。しかし、手放しで喜べるような成果はありませんでした。市民社会は、気候変動や保健をはじめ、焦眉の課題である「地球規模課題」の解決に向けて、G7諸国の具体的なコミットメントを求めています。

※本プレスリリースのPDF版はこちら


サミットへのNGOの評価を漢字一文字で表す「今日の一文字」。皆で選んだ一文字「地」を書いた書道家・徳山尭浩氏。

骨太のコンセプトに欠けた首脳宣言
=NGOの「今日の一文字」評価は「地」=

サミット二日目、5月27日の午前11時、伊勢志摩サミットの首脳宣言(コミュニケ)が一斉に発出されました。首脳宣言は合計32ページと過去のG7首脳宣言に比べて著しく長くなっています。これは、G7各国の間で、課題の優先順位などの設定が十分行われなかった結果とも解釈できます。そのため、地球規模の課題の解決や、昨年国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)で掲げられた「持続可能な世界」の実現という、G7が本腰を入れて取り組まなければならない課題について、具体的なコミットメントが見えない結果となってしまっています。

今回のサミットに合わせて三重に集まった私たちNGO/NPOは、コミュニケに対する市民社会の評価を表す「今日の一文字」について、「地」という字を選びました。この字は、今回のG7サミットに対するNGOの期待が「地に落ちた」ことを残念に思う私たちの気持ちと、しかし、この「地」にしっかりと足をつけて、そこを新たな出発点に、地域や地球規模の課題に改めて取り組んでいこう、という覚悟を表すものです。

私たちは、この「地」を新たな原点として、引き続き貧困や格差、持続可能な開発、環境といった問題に正面から向き合い、取り組んでいきます。

12の課題を5点満点で採点!評価はいずれも「3」以下に

サミットで扱われた各議題について評価するNGO代表たち。

持続可能な開発目標(SDGs 2点
SDGsの実施へのコミットメントは表明されたことは評価。一方で、「格差」の是正といった SDGsの取り組みの根幹をなす課題について、言及が乏しく、具体的な解決方法も明示されていない。

租税回避・パナマ文書 2点
タックスヘイブン等を利用した租税回避によって開発の財源を奪われている途上国の人々こそ最大の被害者であるが、途上国の視点を踏まえた租税回避・タックスヘイブンへの取り組みについては実質的な前進がなかった。

気候変動/エネルギー 2点
会議全体として気候変動の位置づけが低かったが、「パリ協定」の年内発効を目標として示したことは評価できる。一方で、二酸化炭素排出が多い石炭火力発電の規制に全く言及していないのが大きな問題。

栄養・食料安全保障 3
アカウンタビリティ・レポートで透明性のある報告がなされたことは評価できる。一方で、「栄養支援」の名のもとに行われているアフリカなどでの土地収奪や先住民の排除などの問題について言及がなかったことは問題。

開催地の市民からの声 3
地元でサミットが開催されたことで、市民サミット開催が実現し、世界と地域を結ぶ提言活動に結びつく契機となったことは評価。一方、コミュニケでは、市民協働が明記されたのは1か所だけだったのは残念。

保健 3
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジについて、世界的に推進していく枠組み「UHC2030」設立に向けG7が合意したのは歴史的なことで評価。一方、資金コミットメントがなかったことは課題。

ユース 3
環境と税に関する文言は歓迎するが、SDGsについては三側面(経済、社会、環境)が適切に統合されていないという評価。一方でユースに関する記述は、経済の発展という目的に従属したものになっており残念。

難民・シリア 3
G7として敵対的な行為の停止とその継続の必要性の表明、並びに、日本が、中東地域に3年間で60億ドルのコミットを表明したことは評価。一方、G7全体としては指導力発揮できず、根本的な和平実現は不透明。

女性 3
女性やジェンダー平等の文言は何度も登場し、女性のエンパワーメントに向けた意欲はよく表れているが、実現に向けた具体的な言及がない。また、男性6名、女性1名という首脳のジェンダーバランスは改善すべき。

サプライチェーン 2
昨年のエルマウ・サミットでは議題となったにも関わらず、今年は軽く扱われたことは問題。貿易の部分で一部言及されたのみで進展なし。一方、インフラの部分で、社会・環境でのセーフガードが言及されたことについては評価。

教育 1
地球規模の課題解決のためには、地域の多様性を重んじた相互学習としての「持続可能な開発のための教育(ESD)」が不可欠であるが、記述がない。ただ一点、テロ問題の中で「教育と対話」が示されたことは評価。

取り残された課題 0点
福島第一原発事故の放射能汚染問題を抱えた日本でのG7サミットなのに、放射能による人々の健康や安全の課題について全く言及がなかった。日本をはじめG7が直面する本質的な課題であるが、放射能問題は何もないかのように扱われたのは残念。


【お問い合わせ】
2016 年 G7 サミット市民社会プラットフォーム 事務局
◆動く→動かす(Ugoku/Ugokasu (GCAP Japan)) 担当:稲場雅紀
TEL:090-1264-8110/FAX:03-3834-6903 E-mail:office[@]ugokuugokasu.jp

◆特定非営利活動法人 国際協力 NGO センター (JANIC) 担当:堀内葵
TEL:03-5292-2911/FAX:03-5292-2912 E-mail:advocacy[@]janic.org