2016年5月25日 毎日新聞
東京五輪・パラリンピックの準備を進める組織委員会が17日夜にホームページ上で公表した、ある「基準案」に失望の声が上がっている。「4年前のロンドン五輪、今年のリオデジャネイロ五輪の基準よりも、はるかに劣った内容です」。国際環境NGO「FoE JAPAN」事務局長の三柴淳一さんは指摘する。
公表されたのは「持続可能性に配慮した木材の調達基準(案)」。組織委は、東京五輪の準備・運営に使う物品をコスト面だけでなく、環境への影響など「持続可能性」の観点から選ぶ方針を掲げている。その第1弾として、競技場の建設工事などに使う木材の基準をまとめたのだ。
木材問題は国際的に注目されている。マレーシアなどで進む違法な森林伐採が地球温暖化や生態系の破壊に拍車をかけ、先住民族から生活の糧を奪うなど人権侵害にまで及んでいるからだ。日本は主要7カ国(G7)で唯一、違法伐採木材の輸入を規制せず、生コンクリートを固める型枠の合板などに大量使用してきた。G7伊勢志摩サミットが迫った13日の国会でようやく「合法伐採木材等の利用促進法」が成立した(施行は1年後)が、調達基準案の方は、再使用する型枠合板ならば既存の林野庁ガイドラインを守ればOK、と読める。「再使用」の定義もあいまいだ。
この基準案の検討を重ねた有識者会議の議事録は非公開。国民ヘの意見公募(パブリックコメント)も実質6日間余りで締め切られた。組織委によれば、近く体操会場の工事を発注するため、基準の決定を急ぐという。だがこのまま骨抜きの内容にすれば、組織委がうたう「持続可能性」に世界から疑問符がつけられるだろう。(社会部編集委員)